グローバルビジネスという言葉が一般化してすでに久しい。ある一つの企業がグローバルビジネスをするという文脈でのこの言葉の正確な意味は、異なる多数の国々で同時にビジネスを進行させるということだ。グローバルというビジネスをするのではない。仮に同じ商品やサービスを提供するビジネスをグローバルに行うと、かならず国ごとに異なる部分を含むビジネスとなる。ここにカントリーリスクという経営課題が生じる。国ごとに、そこでビジネスをする上で何がリスクになるか、異なることへの対応である。
トヨタのリコール問題で米国議会の公聴会が豊田社長を出席させて審問をしたことはまだ記憶に新しい。米国以外でも例えば中国では当該のトヨタ車はリコール問題を起こしているが、こと米国についていえば、米国のマスメディア、もちろん日本のそれも、怒濤のような報道合戦をおこなった。それほどに米国の公聴会は大きな影響力を持っていた。トヨタにとって、米国議会と公聴会の仕組みや動き(とマスメディアの動き)は知らない存在ではなかったであろう。米国への日本車輸出の増大時期での日米自動車摩擦と自主規制、その後のGMとの合弁事業の開始、これらから何年もたっての今回のリコール問題と公聴会であった。トヨタにとって何年にもわたる米国での事業展開の経験があっても何か学習すべきことが不十分であったのであろうか。一国の行政組織とその動き方の熟知の度合いと対応スキルの蓄積度が低いと、カントリーリスクとなる、このように思えてならない。
多少なりともトヨタという企業組織を調査したことのある者として、この視点でもう一度トヨタの今回の出来事を考えてみようとおもう。そのために手にした本が「比較憲法(改訂版)」(樋口陽一著、青林書院新社)」である。日本という国に暮らしている者が他国民の生活にかかわる商品やサービスを提供するビジネスをする時、その国のそもそもの成り立ちから理解しておかないとならないであろう。日本国憲法と米国憲法はどのように違い、なにゆえにあのような米国議会の公聴会が強い力を持ち、しかもマスメディアが狂乱するのか。日本の国会の証人喚問ではあのようなことは起きない。カントリーリスクの観点からこの本を読まねばならない。この本の存在を教えてくれたKBS学生の金山素子君に感謝である。
No.14 「カントリーリスク」
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