
人間の能力の構成要素はざっくり言って資質と経験である。厳しい言い方をすれば資質に恵まれている者に伸びる経験を積ませるのがベストである。恵まれている度合いの低い者に同様の経験をさせても能力の形成度合いは高まらない。そうは言っても、現実にはもちろん様々な偶然が左右するので、この構図はそれほど単純ではない。
ところが子供を育てる親の立場になると、案外この構図が逆向きになって単純な理解のされ方をすることがままあるようだ。あるテレビ番組で、野球のイチローの幼少期に母親は毎晩彼の足裏にマッサージすることを続けたそうだ。この番組を見た多くの母親は、そうか、足裏マッサージが能力形成に効果的なのだ、とこぞって実行し始めたとか聞く。
これは完全な要因関係の取り違えであると言い切ってよいかどうかは微妙なところがある。親心という愛情の発露があるからだろう。子育てをとっくに終わったある母親が、もっと早くにこの番組を見ていれば実行できたのに悔しい、という言葉をもらしたそうだ。それほどに母親の愛は深い。