No.30 「幼児虐待の母娘間伝播」

幼児虐待のニュースが増える傾向にあるが、ひょっとすると当たり前になりすぎてニュースにならなくなる時期が来るか、と危惧している。次のことが世間でどれほど広く知られているか詳しくないが、幼児虐待は母から娘に伝播する現象だといわれている。つらいことである。

母娘間で伝播すると言うことは二つの理由が考えられる。経験か遺伝かである。このどちらが正しいかをサルの母娘の観察で解明した研究があるそうだ。虐待傾向のある母サルと、ない母サル。それぞれの出産直後の娘2匹を、その母に直接育てさせる組みと、他方に育てさせる組みを作る。それぞれの母はそれぞれの子供をどのように育てるか観察した。その後、そだった娘が母になった時に出産した娘をどのように扱うかも観察した。この観察研究では、長い時間をかけて事例の数を増やし、精密な組み合わせをとることで、経験によるのか遺伝によるのかの科学的結論を出した。答えは経験であった。つらい事実であるが、母に虐待されて育った娘は、自らが母となった時に娘を虐待する傾向を強める。

この事実は、母となる人物、もっと精密にいえば、虐待を生き延びた後の女性に、教育的な方法で虐待を減らそうとしても効果がないことを示している。となると効果があるのは虐待を阻止する外からの介入ということになる。この方法が日本では遅れている。