No.32「 ティッピングポイント 」

人は、分かっているけどやらない。分かっているならどうしてやらないのか。私の判断ではこの問いに答えはまだないと思う。ちまたでは、この問いにあたかも答えるかのように、ハウツー本が溢れている。読んで役にたたなかったので、人は別の本を求めることをやめない。  

「知っていること」と「実行すること」の間には随分と距離がある。それを短くすることができるとすばらしい。  

ある若い人と知的会話を1時間半ほどしているうちに、この問題を解くカギが一つありそうだと、気づいた。人は知ることによって頭の中にさまざまな想いを構成する。ほとんどの場合、知ることで増えてきたそれらたくさんの想いは、相互にうまく整理されることができないままとなる。整理されないもろもろの集まりは、たとえて言えば、本人の気持ちの落ち着きをなくすかのように発酵し、流動し、何ものかを渇望させる。何を渇望しているのかさえ分からないので、また流動する。  

この状態になっている人の何らかのタイミングをとらえて、うまく工夫した別の何かを投入すると、ティッピングポイントを押すことが出来る。はずではないか、と考え至っている。つまり仮説を持った。仮説が正しければ、「知ること」と「実行すること」を結びつける一つの方法の考案を可能とするはずである。これをしばらく研究で追ってみようと考えた。まずはケースメソッドの教室でそれを追うことから入る。